親知らず
親知らず
人間の歯は正中から1番・2番・3番・4番・5番・6番・7番と番号がついていて8番まであります。 8番目の歯を「第三大臼歯」とか「智歯(ちし)」とか「親知らず」と呼びます。
説①:7番以下の歯が生えそろうのは14歳くらいなので、親は子どもの7番までは知っているが、8番が生えてくるのは知らないので親知らずという名前が付いたという説(こちらが一般的)。 説②:昔は寿命が短かったので子どもが20歳になった頃には親が亡くなってしまっていて、親に会えない歯という意味で親知らずという名前がついたという説。
英語ではwisdom tooth「知恵の歯」といって、物事の分別がつく年齢になってから生える歯という意味です。フランスやスペインやドイツや中国もそれぞれの言語で「知恵の歯」という意味で呼ばれています。韓国では愛の歯といって、愛を知る年齢だからという意味です。
親知らずは4本あります(ない場合もあります)。2本は上顎、2本は下顎にあります。下の親知らずは、普通にたて向きに生えている場合もあれば、横向きに生えている場合もあります。上の親知らずや下顎でもたて向きに生えている親知らずの抜歯は術後大したことない場合が多いのですが、下顎の横向きの親知らずは、術中なかなか抜けなくて1時間以上かかったり、麻酔が効きにくかったり、術後、痛みや腫れが強いことが多いので親知らず=怖いというイメージが定着したと推測されます。
下顎の親知らずを抜歯すると、抜歯をした側の顎が大きく腫れる場合があります。腫れがあまり目立たない場合もあるのですが、生命活動の高い20代の若い方が抜くことが多いので、腫れる確率は高いわけです。腫れても痛みがそれほどない場合もあるのですが、大きく腫れている顔を同世代の友達が見て驚くわけです。
ドライソケットとは歯を抜いた後に、感染を起こし、穴が埋まらずに激烈な痛みが続く症状。1か月以上続く場合もあり、痛み止めが効きにくいこともあります。親知らず以外の歯でも起こりますが、多くは下の横向きの親知らずの抜歯後に起こることから、親知らず=怖いというイメージが定着したと推測されます。
写真のように普通に生えている「たて向きの親知らず抜歯」はそれほど大変な抜歯にならないことが多いです。親知らず以外の歯を抜くのと同じ「通常抜歯」と同じレベルで抜ける場合が多いです。(ただし外科処置ですので、通常抜歯と同じレベルだから痛くないとか、簡単に抜けるとか極端な二元論として説明しているわけではありません。通常抜歯でも術後、痛いこともあるし腫れることもありますが、たて向き親知らず抜歯は極端に恐れすぎないでという意味です。)
下の横向きの親知らずは頻繁に見られますが、上の親知らずでも横向きはたまにあります。たて向き親知らず抜歯よりも外科的難易度は上がります。レアケースとしては逆さ向きもあるのですが、深く埋まっていることが多いので抜くことは少ないです。
麻酔の針が苦手な方がいらっしゃいますので、表面麻酔をします。表面麻酔が効きましたら、親知らず周囲に注射針を使って麻酔液を注入します(浸潤麻酔)さらに強力な麻酔法(伝達麻酔)をします。神経の根元に麻酔液を注入します。
抜歯の時間が約20~30分ほどかかり、お口が疲れてしまいますので、お口を開ける補助器具(開口器)をつけます。
術前にCTで親知らずの埋まっている向きを確認してイメージを作っておきます。埋まっている向きにメスで切開を入れます。剥離子(はくりし)で歯肉をはいで、骨と親知らずの境目をしっかりと出していきます。
歯を削る機械(タービン)を使って親知らずの頭を切断します。限られたお口の奥のスペースで行う作業ですので、お口を大きく開けていただくことになります。この歯の頭を切断する過程は通常抜歯にはありません。横向きの親知らずだけの特別な過程となります。親知らずの頭と根っこを分けないと、手前の7番にぶつかってしまって横向きの親知らずを出すことができないからです。歯の頭の部分だけ分割して外に出します。分割の回数については、歯の状態によって変わり、1回で済む場合もあれば、3分割、4分割なんて場合もあります。
歯の頭をとった後に残った歯根を抜いていきます。ノミのような器具を歯と骨との間に入れて、ゆっくりと上に持ち上げていきます。この時、歯と骨を繋ぐ歯根膜が切れる音がミリミリと聞こえる場合があります。これで歯根が抜けたということで、親知らずが全部抜けたということになります。
歯根を抜いた後、歯根の先端が折れて骨の中に残っていないか、分割した歯の一部が残っていないかを確認をします。
抜歯後、当然出血がありますが、この血が大事な役目を果たすことになります。血は空気に触れると血小板の成分により固まります。皮膚の場合はカサブタを作り出血を止めますが、お口の中の粘膜の場合は、血餅(けっぺい)というブヨブヨとしたゼリー状の塊が抜歯をした後の穴を埋めて止血をしてくれます。そればかりか、細菌感染からも保護してくれたり、その後の新しい歯肉や骨になるといった役割まで果たしてくれます。状態の良い血餅が早い段階で形成できるかどうかが、今後の治りを決定づける重要な要素となります。ですから、抜歯後、出血が少なすぎる場合には骨を掻爬(そうは)と言って引っ掻いて、出血を促します。抜歯後の穴が、ある程度血で満たされるのを待ちます。
血餅を維持する目的でコラーゲンのスポンジ(スポンゼル)を中に入れて、血とよくからませます。当院ではスポンゼルを入れますが、入れない歯医者さんもいます。入れたスポンゼルは、抜歯した穴が治っていく過程で、徐々に体の外に排出されていきますので、スポンゼルをとる必要はありません。
傷口を縫合します。上の写真のように粘膜は完全に閉じないことが多いです。元々親知らずの頭があったため粘膜が足りないからです。この空いた部分は血餅が埋めてくれます。血餅はゼリー状で柔らかく取れやすいので、歯ブラシで触ったり、食べ物が入らないように、抜歯後の生活は気をつけてください。約2週間~1か月後くらいで抜糸をします。抜糸前に、糸が多少緩んだり、抜けてしまうこともあります。その多くは問題ありませんが、心配なようでしたら、歯科医院に診てもらってください。
血を固めるために、ガーゼを噛んでいただきます。ガーゼは、30分~60分に1枚ずつ取り替えていただきます。約3時間くらい噛んでいただければ、およそ出血は止まります。それまでは、きちんとガーゼを噛んでいただいて、強いうがいは絶対に避けてください。なお止血の妨げになりますので、心拍数が上がる行為、例えば、運動、お酒、お風呂(シャワーは可)は控えてください。傷口周辺を押したり、歯ブラシをかけることは、当分の間控えてください。
横向きの親知らず抜歯後にたびたび発症するドライソケット。激烈な痛みが1か月以上続くこともあります。ドライソケットを完全に予防できる手段は現在のところありませんが、発症確率を下げるには良い血餅を早いうちに作ることだと考えられています。抜歯直後から数日がとても大切です。
下顎の親知らずを抜いたときに、親知らずの近くにある下歯槽神経を損傷してしまった場合に起こる神経麻痺です。0.5%~数%の確率で起こるとされています。下歯槽神経麻痺を起こすと、麻酔がかかっている時のような下唇の知覚の麻痺が残ります。髭をそった時に下唇あたりの知覚が鈍い感覚があります。時間の経過とともに麻痺の範囲は徐々に狭まっていきます。
腫れの大小は起こります。これは親知らずを抜いた傷を早く治そうと血液が集まってくるからです。そのため生命活動の活発な若い方ほど腫れの症状は顕著となりやすい傾向があります。もちろん全く腫れたように見えない場合もありますが、少しは腫れていると考えられます。数日から1週間くらい続きます。大きく腫れていても痛みを感じていない場合もありますし、痛みを伴っている場合もあります。
抜歯後の痛みは数日は続きます。ほとんど痛みを感じない方から、痛み止めを飲んでもあまり効かない強い痛みの方まで強さはさまざまです。
親知らずを抜歯した穴に、自分のお口の中に住んでいる口腔常在菌が感染して、傷口がうまく治らず、良好な血餅ができずに激烈な痛みを伴う症状です。2週間から場合によっては1か月以上の長期にわたって続く場合があります。
大きな手術をする際に用いられる全身麻酔で意識をなくして親知らずを抜歯する方法です。リスクもありますので全ての方におすすめはできませんが、強い恐怖症の方や強い嘔吐反射がある方、4本同時に抜歯したい方などにはおすすめです。
血管から鎮静剤を入れて、意識レベルを下げてリラックスさせて抜歯をする方法です。本当の全身麻酔とは違い意識はあります。強い恐怖症とまではいかないが、不安だという方に向いています。
親知らずを抜くことになったけれども、怖くて怖くてどうしてもダメな場合は全身麻酔がいいでしょう。術中の意識は一切ありません。全身麻酔から覚めて気がついたら親知らず抜歯は終わっています。体験者の評判もなかなかいいですよ。
当院での親知らず抜歯は局所麻酔のみです。怖いので全身麻酔を希望しますという患者様には、大きな病院の口腔外科を紹介します。
例えばの話ですが私が紹介している病院は3つあります。
また、病院の口腔外科の担当の先生が変わるとやり方が変わったりします。病院によってというより、担当のドクターや麻酔科医のやり方によるところが大きいと思います。いずれも保険適応なのですが、入院すると5~7万円くらいかかると伺っています。中には自費のところもあるかもしれません。ただし、これは私の周りの病院のお話です。皆様はかかりつけの歯科医の先生に、「全身麻酔で眠らせてから4本一気にやってくれるところを紹介してください。」言っても、歯科医の先生がやり方を指定することはできません。紹介先が全身麻酔をしてくれるかどうかはわかると思いますので聞いてみるといいと思います。そして具体的な全身麻酔や入院については病院の口腔外科の先生と相談してみるといいと思います。
A.そんなことはありません。
親知らずが4本あっても、下顎の親知らずが横向きに生えていても、必ずしも抜く必要はありません。条件がそろえば、横向きの親知らずも一生埋まったままで、全く害はない、なんて方も結構いらっしゃいます。「体力のある若いうちに抜いておいた方がいいよ。」なんて聞いたことがあるかもしれませんが、抜く理由がない限りそのままでいいです。虫歯になりそうな場合は歯医者さんに抜くことをすすめられるかもしれませんし、別の歯医者さんからはまだ大丈夫って言われるかもしれません。親知らずの抜歯をすすめるラインは歯医者さんによっても意見が異なるところなので、どの先生が正しいということもないかと思うのですが、かかりつけの先生のすすめにあなたが納得いって抜歯をする覚悟ができるのであれば抜いていいかと思います。
A.①智歯周囲炎
智歯(ちし)周囲炎とは親知らず周りの歯肉が腫れる症状のことです。歯肉が腫れて膿が出たり、症状が進めば、発熱、口が開きにくいなど、食事もままならなくなります。親知らずを抜歯する理由で最も多いのがこの智歯周囲炎です。
A.②7番を虫歯にしてしまうから抜く。
7番と親知らずの間は虫歯がよく発生します。虫歯が発生してしまってから抜歯する場合もあれば、できれば虫歯が発生するリスクが高そうなら、予防的に抜いておくのも賢明かと思います。
A.③歯科矯正のために抜く
歯科矯正を行う方は、矯正の先生に親知らず抜歯をすすめられる場合があります。理由は親知らずが前の歯を押して歯並びを見出してしまう可能性があるからです。
A.親知らず周りの歯肉の炎症のことです。
左図のように7番とふぞろいの親知らずとの間に、清掃が難しいスペースが空いてしまい、食べ物や口腔内細菌が入ってしまうことにより歯肉が腫れる症状のことです。上より下の親知らずに見られることが多く、親知らず放出時期である10代から20代と若い方に多く見られます。また、右図のように上の親知らずが下の歯肉を噛んでしまって発症する場合もあります。
体調が悪くなると再発することが多い。
智歯周囲炎が一度おさまっても、再発を繰り返す傾向があります。体調が悪くなり免疫力が下がると、症状が出やすくなります。普段元気な時は、多少歯肉に細菌がいても免疫の力で抑えていたものが、風邪などで免疫が下がると歯肉が腫れたり痛んだりします。
段階的に悪くなる傾向があります。
歯肉の腫れという症状から始まり、触ると痛い、押すと膿が出るという症状が現れ、次に口が開きにくくなり、他人が見て顔の腫れがわかるようになります。発熱や倦怠感を伴うこともあり、口が開きにくく、食欲が落ちます。
頬部蜂窩織炎(きょうぶほうかしきえん)
さらに我慢してしまうと、炎症は顎の下から首のほうまで進行して膿が溜まってしまいます。こうなると水を飲むことすら難しくなります。
治療法
はじめは抗生物質の投与と患部の洗浄で様子を見るのですが、再発を繰り返す場合には親知らずの抜歯が最善策となります。親知らずを抜く理由の第一位はこの智歯周囲炎です。
A.本当です。
親知らずと7番との間に磨きにくいスペースがある場合は親知らずが虫歯になってしまう場合もあれば、7番の後ろの方が虫歯になる場合もあります。親知らずの慢性虫歯であれば、しばらく放っておいてもさほどの問題はないのですが、7番を虫歯にしてしまうのは問題です。歯医者さんで7番の虫歯リスクが高いと判断されたら、予防的に抜いてしまうのも良いかと思います。
A.部分麻酔をします。
部分麻酔には浸潤(しんじゅん)麻酔といって、歯の横に打つ通常の麻酔と、伝達(でんたつ)麻酔といって下歯槽神経の根元に打つ麻酔の2種類があります。当院では、下の親知らずなら伝達麻酔を、上の親知らずなら浸潤麻酔をします。伝達麻酔は効果が強いので、抜歯中に痛みは感じにくいと思います。ただし、智歯周囲炎の腫れが強い場合には麻酔が効きにくいこともあります。
全身麻酔について
当院では全身麻酔や静脈内鎮静法は行っておりません。全身麻酔もリスクはありますので、皆様全員におすすめはしませんが、恐怖心が強い方や嘔吐反射の強い方は全身麻酔が良いかと思いますので、その場合は大きな病院を紹介しています。
A.A.7割の方は、抜歯後当日は痛かった。5割の方は3日間は痛かった。3割の方は腫れた。熱が出るのは数%。
(以上の割合は当院調べです。)下顎の埋伏親知らずの抜歯は痛みの程度が強い場合が多いです。腫れは4~7日くらい続きます。しかし、こうした急性症状は必ず治りますのでご安心ください。
A.人の顎が小さくなってきたからです。
数千年前の旧石器時代の食べものは非常に硬く、咀嚼回数が多かったために顎の筋力が発達しており、顎骨は頑強な作りでした。歯も8番まで必要で、噛めないということは生存に直結する大問題でした。ですから、当時の人は8番まできれいに並んでおり生きていくのに必要な歯だったわけです。
調理法の発達が顎を小さくした。
しかし、食文化の変化や調理法の発達により、食事はあまり咀嚼回数の必要のない柔らかいものに変化していきました。すると咀嚼に必要な筋力は衰え、顎骨も小さくなっていきました。8番が真っ直ぐ生える場所がなくなったため、曲がって生えることが多くなってしまったのです。真っ直ぐ生えている親知らずを持っている人は鎌倉時代では4割、現代人では2割程度と時代とともに少なくなっています。8番自体の退化傾向も顕著で、現代人の4人に1人は親知らず自体がないと言われています。
将来は8番はなくなり、人間の顔はどんどん細くなっていく
現代食は柔らかさがさらに進んでおり、あまり噛む力を必要としなくなってきました。これにより8番の退化傾向は強まり、人間の顔はどんどん細くなっていくと予想されています。8番がなくなれば、親知らず問題はなくなるわけですが、今度は7番問題がでて来るかもしれませんね。
A.上の真っ直ぐなら1分。下の真っ直ぐなら5〜10分、下顎の横向きなら15〜30分。
麻酔が効いて抜歯に取りかかってからの治療時間です。術者の熟練度により、また患者様の開口量や親知らずの状態によって大きな幅はあります。(上記の時間はあくまでも目安です。) 下の横向きの親知らずは診察室に入ってから出て来るまでは1時間くらいかかると思っておいてください。
A.縫合をするかはケースバイケース。糸は溶けません。
上の真っ直ぐはあまり縫合をしません。下の真っ直ぐはケースバイケースです。下の横向きは縫合します。口腔内は唾液という水分がありますので、溶ける糸は使えません。そのため2~3週間後に抜糸に行く必要があります。しかし、抜糸の前に糸が緩んだり、取れてしまったりということはよくあります。多くは問題ないのですが、心配でしたら先生に診てもらいましょう。
A.スポンジ状のコラーゲンです。
抜歯をして空いた穴に入れます。入れる先生もいれば、入れない先生もいて私は入れる派です。スポンゼル以外にもいろいろな材料があります。このコラーゲンの塊が血を吸ってゼリー状になり、傷口に血餅(ケッペイ)という蓋を早期に良好な状態で作ってくれるということを期待して使用しています。歯肉は1か月もあれば新しい歯肉に置き換わるのでスポンゼルがずっと体の中に残ってしまう心配はありません。
A.本当です。
下顎の埋伏歯の抜歯の際、下歯槽神経を傷つけて唇や顎に痺れが残ることが0.5~数%あります。痺れると抜いた側の下唇あたりの皮膚を指で触っても感じにくくなってしまいます。通常半年、1年くらいで痺れの範囲は小さくなっていき、日常生活にさほど問題のない程度に落ち着くことが多いです。親知らずの歯根が下歯槽神経に近いほど麻痺のリスクはありますので、親知らずの頭だけ取ってしまうという方法もあります。
A.本当です。
上の親知らずを抜いた場合、鼻の横にある上顎洞という空洞と抜歯窩が繋がってしまうことがあります。通常は縫合して傷口が治癒すればふさがってしまいますので過剰に心配する必要はありません。しかし、傷口が治るまでに鼻を強くかんだりすると、繋がってしまうことも考えられます。逆に鼻血が出る可能性もあります。上の親知らず(6番や7番も)を抜いて鼻血が出たら、ガーゼを噛んで、ティッシュで鼻栓をして歯医者さんに連絡しましょう。くれぐれも鼻を強くかんで血を出そうなんて思わないでください。
A.なりません。
小顔を決定づけるのは下顎角周囲の骨の大きさと頬骨の出具合です。位置的に親知らずはほぼ無関係ですので、抜いて小顔になることはありません。
A.簡単なもので2,000円くらい。難しいもので6,000円くらい。
3割負担の保険の場合。入院しない場合。局部麻酔の場合。自費治療で行っている診療所は別です。
A.ケースバイケースです。
抜歯したほうがいい場合もあれば、抜歯をする必要がない場合もあります。将来的に親知らずがインプラントに影響を与えそうなら抜歯をおすすめしますし、数年は影響なさそうならそのままにしておきます。これは直接見て判断させてください。
A.若い方は親知らずで悩んでいる方が多いからです。
この質問は当院のYouTubeチャンネルのコメント欄によくいただくものです。皆様のコメントを読んでいて意外な角度からの質問だなぁと思いました。しかし、考えてみれば10代、20代の方の多くの方は親知らずがあるし、半分以上の方が横向きの親知らずをお持ちです。ですから、YouTubeが若いあなたの親知らずの悩みを知っていたのではなく、若い人に親知らず動画をおすすめすれば多くの人が当てはまる、と推測されます。
A.一般の方が理解しやすいことを意図として製作した動画です。
YouTubeの親知らず抜歯の動画のコメント欄にいただいたご質問です。実際の下顎埋伏親知らずの抜歯は、動画の作業をコップの底で行う感じになります。術野が見えるのはおそらく歯科医師のみ。アシスタントもしっかりとは見えないでしょう。カメラすら入る余地はほとんどありません。撮影中、カメラと同じ方向から入ると、手や器具でピントも合わないでしょう。本番の方向からの撮影は、一般の方への説明には向きません。そこで私なりに工夫をして見えやすいことを第一に動画を製作しました。そのため横や後ろから器具が出てきます。以上のような製作意図の本質的なところをご理解いただいて、細かいところは目をつぶっていただき、ご覧いただくとありがたいです。
A.理解しているつもりです。
YouTubeのコメント欄に寄せられた質問です。こんな怖い手術を受ける身にもなってみろってことですね。しかし、歯学部の学生は一番大変かもしれません。それは実習で学生同士、親知らずを抜き合うからです。もちろん隣には歯医者の先生が付いていますが、基本手を出さず放置されます。私は下顎の水平埋伏でしたので、片方2時間以上かかりました。術中大変だったのが、途中局所麻酔が切れ何回も追加したので、動悸がしたのを覚えています。歯の頭を落とすのは慣れないと難しいので、これに非常に時間がかかりました。ようやく抜き終わった時には歯の原型がなくなっていました。抜歯後の痛みはそう感じませんでしたが、5日間は片側の顎がパンパンに腫れました。そのため皆様の気持ちは理解しているつもりです。
A.直接診ないと診断をして治療方針を立てることができないからです。
YouTubeのコメント欄から治療相談をして来る方がいらっしゃるのですが、私は個別の治療相談には答えないようにしています。歯医者が口腔内の診断を下した場合、一般の方と違い責任が伴います。また、診断が同じであっても歯医者によって治療方針が違う場合もあります。内藤が治療方針をコメントした場合、かかりつけの先生と同じならいいのですが、違う場合はかかりつけの先生にも患者様にも不利益を与えてしまうことになります。質問は動画にあるような、一般的な流れの質問だけに限らせてもらい、個別の診断に関わる部分についてはお答えしない方針です。どうしてもという場合は、内藤歯科へいらっしゃってください。
A.日本の歯科模型・材料の株式会社ニッシンで購入しています。
すごくリアルな模型だという感想が多いです。残念ながら歯科医療従事者でなければ、購入できません。
ドライソケットとは抜歯後痛みがあり、抜歯後の血餅が欠如し、骨が露出している状態のことと定義されています。出典元はこちら(※下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 ―第2報:ドライソケットについて―)
抜歯窩は唾液の中にあるので、唾液の中にいる細菌が多少なりとも入ってしまいます。入ってきた細菌に打ち勝ち順調に治るサイクルに入ってしまえば、抜歯後感染の影響(痛みなど)は起こらないですが、侵入した細菌が優勢に働くと、順調に治るサイクルに入れなくなり、抜歯窩は感染、炎症を起こし痛みが出ます。ひどくなると骨が露出してドライソケットと呼ばれる状態にまで発展します。もっと重症化すると蜂窩織炎が口腔底や頸部にまで発展する場合もあります。
抜歯後、数週間にわたり激烈な痛みが続く場合には、抜歯後感染が原因です。実際に骨が露出して見えている抜歯窩もありますが、臨床の現場において骨が露出しているかどうかの判断は難しい場合が多いと個人的には考えています。激烈な痛みのある患者様の患部は触ることすら難しく、例えば抜歯窩に入ってしまっている食べかすをとって骨が露出しているかどうか調べることは患者様にとってメリットも少ないわけです。
当院では抜歯後、骨が露出している状態が確認できた場合には「骨の露出を伴う抜歯後感染ですのでドライソケットですね。」と説明しますが、骨が露出していない場合や不明な場合には「抜歯後感染です。」と説明しています。(参照:これからの抜歯〜その背景と実際 学建書院 編集 森昌彦 P118,147,148,149)
ドライソケットの痛みは、親知らずを抜歯した当日の痛みより強い場合があります。痛み止めが効きにくいことはよくあります。それが1か月以上続く場合があります。ドライソケットの経験者も比較的多いので、ドライソケットが恐れられるようになったのでしょう。
ドライソケットの発症確率は下顎の横向きの親知らず抜歯の場合、15〜25%という論文があります。すると4〜6人に1人はドライソケットになるという計算になります。ちなみにドライソケットになるのは下の親知らずだけではありません。他の永久歯の場合でも起こりますが、2〜4%という論文があり発症確率に大きな差があります。出典元はこちら(※下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 ―第2報:ドライソケットについて―)
親知らずを抜いた後は当日から痛みが出て、翌日から減っていく傾向がありますが、ドライソケットが出現すると3日目から次第に痛みは大きくなり7日目がピークとなります。ドライソケットによる痛みが発生する平均日数は4.7日です。出典元はこちら(※下顎埋伏智歯抜歯の臨床的研究 ―第2報:ドライソケットについて―)
痛みは2〜3週間である場合が多いのですが、1か月以上続く場合もあります。
痛みに対して強い人もいれば、弱い人もいるので一概には言えませんが、人によっては人生で一番痛かったとか、痛み止めが効かなかったと表現する人もいるくらい激烈な痛みを伴うこともあります。1か月続く場合には食欲不振により体重が減少する場合もあります。
ドライソケットは臭いですか?こんなご質問を受けたことがあります。ドライソケットは炎症ですから、理屈的には無臭ということはないでしょう。歯もみがけないでしょうし。しかし、ドライソケットを発症している方は、痛みの問題の方が大きいので臭いがどうかなど瑣末な問題だと思われます。
血餅(けっぺい)とはゼリー状の血の塊のことです。お口の中は唾液という水分があるので乾燥しているカサブタはできません。代わりに血餅ができてフタをしてくれればよいのですが、上手くできないこともあり、その間にお口の中に常駐している細菌に感染されるとドライソケットが発症します。
血餅がなんらかの原因でとれてしまうとドライソケットの発症確率は上がります。なんらかの原因とは例えば、強いうがいとか、食べかすが詰まって一緒にとれてしまうとか、歯ブラシでとってしまうなどが考えられます。
親知らずを抜いた後、縫合すれば入口は小さくできますが閉じることはできません。また、肉眼的に閉じることができても唾液という水分は中に入りますので当然細菌も中に入ります。縫合に意味がないということはなく、ドライソケットの発症確率を下げていると考えられます。しかし、縫合したからドライソケットにならないということはありません。
残念ながら、ドライソケットの予防法は、確立されていません。抜歯の後、コラーゲンの塊を入れたり、抗生物質の軟膏を入れたりとさまざまな予防策をしていますが確実に止める方法は知られていません。
とにかく血餅を取らないように注意してくださいね。
生理食塩水で抜歯窩を洗浄して、食べかすを除き、消毒して、抗生物質を追加投与して様子をみます。
痛みが特に強い場合は、麻酔をかけ抜歯窩の感染内容物を引っ掻き出して、新たな出血を促し、コラーゲンを入れて縫合する。再度抜歯窩が正常な治癒サイクルに入ることを目的に傷口のやり直しをする方法です。