歯周病菌とインプラント周囲炎について
- 2025年6月18日
- インプラント
インプラント治療において、長期的に安定した状態を維持するには、口腔内の健康管理が欠かせません。その中でも「インプラント周囲炎」は注意すべき疾患の一つです。これは、インプラント周辺の組織に炎症が生じ、骨に影響を与えることで、インプラントの安定性が損なわれるおそれがあります。
インプラントの安定性には、噛み合わせなどの力学的要素も関与しますが、本記事では「歯周病菌による感染」に着目して解説いたします。
歯周病と歯周病菌について
歯周病は、歯を支える歯肉や骨といった歯周組織に炎症を起こす細菌感染症です。口腔内には常在菌が数百種類以上存在しており、必ずしもすべてが悪影響を及ぼすわけではありません。
その中でも、歯周病に関連する特定の細菌が増殖することにより、歯肉の炎症や組織の破壊が引き起こされることがあります。歯周病は単一の菌によるものではなく、複数の菌が関与する疾患であるのが特徴です。
注目される歯周病菌:「レッドコンプレックス」
歯周病に関連するとされる細菌の中でも、特に病原性が高いとされる3種の菌があります。これらは「レッドコンプレックス」と呼ばれ、歯周病の進行に深く関与していると考えられています。
- ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)
- タンネレラ・フォーサイシア(Tf菌)
- トレポネーマ・デンティコーラ(Td菌)
これらの菌は歯周病だけでなく、インプラント周囲炎との関係も示唆されており、口腔衛生管理の重要性が高まっています。
インプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲組織に炎症が起こり、骨の吸収などが生じる疾患です。進行するとインプラントの安定性が失われ、機能を維持できなくなる可能性もあります。
インプラントは天然歯と異なり歯根膜が存在しないため、細菌の侵入に対する防御機構が弱く、口腔衛生の影響を受けやすいとされています。
当院ではストローマンインプラントを使用しておりますが、ストローマンインプラントの手術後10年で100本中3本くらいの割合でインプラント周囲炎が起こるという報告があります。(スイスのベルン大学調べ)インプラント周囲炎になったからといって、すぐにインプラントが抜けてくるということではなく、5年とか10年とかかけて、長い時間をかけてゆっくりと骨が溶けて、抜けてきてしまうわけです。発症したインプラント周囲炎を確実に止める方法は今のところ確立されていません。
歯周病菌とインプラント周囲炎の関連性
歯周病の既往歴がある場合や、口腔内の清掃状態が不十分な場合は、インプラント周囲炎のリスクが高まる傾向があります。実際に、レッドコンプレックスに属する細菌がインプラント周囲から検出されるケースも報告されています。
そのため、インプラント治療前には歯周病の治療や細菌検査を行い、適切な口腔環境を整えておくことが推奨されます。
レッドコンプレックスが多い場合は投薬(歯周内科)を行いレッドコンプレックスを減らす治療を行います。歯が抜けました、それではそこにインプラントを入れましょうという、従来の安直な考え方では、インプラント周囲炎になる確率を下げられず、安心してインプラント手術を受けることできません。
インプラント周囲炎の予防と対策
① 細菌検査(PCR法)によるリスク評価
当院では、インプラント治療前に口腔内の状態を評価する一環として、レッドコンプレックスに注目した細菌検査(PCR法)をご案内する場合があります。検査結果に基づき、必要に応じて治療計画をご提案させていただきます。
また、治療後の継続的なケアが、インプラントの状態維持に重要であると考えられています。詳しくは、当院ホームページの治療紹介をご参照ください。
(※掲載情報は個人が特定されない範囲に限っております)
② 必要に応じた細菌対策
検査の結果によっては、抗菌剤の使用や口腔衛生の指導を組み合わせた対応を行います。細菌数が多い場合には、リスク軽減を目的とした処置を検討します。
③ 継続的なメンテナンス
インプラント治療後も、定期的な検診やクリーニングを通じて、安定した口腔内環境を保つことが推奨されます。環境は時間とともに変化するため、継続的なフォローアップが重要です。
インプラントは入れて終わりではありません。当院ではインプラント10年保証をしておりますが、メンテナンスに来ていただく方だけの特典となっております。
インプラント周囲炎が起きた場合の対応
インプラント周囲炎が生じた場合は、可能な限り早期の対応が望まれます。軽度であれば、抗菌薬の使用やクリーニングで対応できることがあります。
当院で使用しているインプラントは、スクリューリテイン構造であるため、必要に応じて上部構造を外して清掃が可能です。進行度によっては、外科的処置(感染組織の除去、骨再生療法など)を行うこともあります。
横浜でインプラントを検討中の方へ
歯周病菌とインプラント周囲炎は密接に関連しており、特に歯周病の既往がある方は注意が必要です。治療前の適切な評価と、治療後のメンテナンスを継続することで、良好な状態を保ちやすくなると考えられています。
当院で行っているインプラントの症例をHPに掲載しておりますのでご覧ください。横浜近郊でインプラントをご検討の方は、医療法人社団横浜歯友会 戸塚駅前内藤歯科へご相談ください。セカンドオピニオンも承っておりますので、お気軽にお問合せください。ご予約はWEBでも承っております。