横浜で院内ラボを持つ歯科医院は少ない
- 2023年11月7日
- インプラント
インプラントの人工歯を作るための技工室
インプラントの人工歯を作るためのデジタル歯科技工室は、従来の院内技工室と設備や器具が全く異なります。新素材のジルコニアはデジタルの加工技術により製作されるものであり、アナログでは加工ができません。歯科技工の歴史はおよそ100年、しかし近年の歯科技工のデジタル化により100年で習得した技術のほとんどは使い物にならなくなってしまいました。例えば今までであれば、熟練の歯科技工士がワックスを使って石膏模型上にしか修復物を制作していきます。そのため、技工室にはワックスを溶かす器具、盛り付ける器具、石膏模型を作る器具、研磨をする器具などが必要でした。しかし、現在ではワックスや石膏模型は一切使いません。そのようなアナログ的な部分は全てコンピューターというデジタル的な機器の中に入ってしまいました。そのため、精度が格段に飛躍することになりましたが、実はメリットばかりではありません。デジタル機器は設備投資費用が非常に高いというのが最大の障壁でしょう。また導入当初は誰でも素人ですから、デジタル技工に不慣れであった数年前は何度アナログに戻そうかと悩んだ時期もあったくらいです。しかし、現在ではそのような壁を乗り越えて、ほぼすべての問題をデジタル技工で解決できるようになりました。
デジタル技工に対する知識も豊富です。
CADCAMによるコンピューター上での歯の設計は、手先の器用さよりもパソコン操作の熟練度が要求されます。当院が採用しているジルコンザーンというメーカーのCADCAMは、操作設定が細くてさまざまな症例に対応できる、玄人好みのマシンになります。しかし、その分制作サイドの知識量も多くなければなりません。設計や操作を覚えるのにとても多くの時間がかかりました。パソコンですからフリーズ等のトラブルやスキャナーからのマッチングエラーもあり、デジタル機器ならではのトラブル対処能力という従来にはなかった適応力が求められます。またスマートフォンと同じく数ヶ月に1度のアップデートもあり、操作性が大きく変わってしまうこともあり、そのアップデートに適応しなくてはいけないという負担もございます。
専属の歯科技工士が常駐しています。
CADCAM機を実際に動かすのは、当院に常駐しております歯科技工士です。当時の歯科技工士の教育課程にはCADCAM機を動かす授業はありませんので、数年前に1からコンピューターの設計技術を勉強いたしました。アナログの歯科技工の経験しかなかった当院の歯科技工士は、講習会や勉強会に出席し慣れないデジタル加工を半年でマスターしてくれました。100分の1ミリの精度で制作するCADCAM機は、精度として人知の及ぶところではありません。現在型取りから設計制作に至る過程の90%以上はデジタル的な技工になってしまいました。しかし、研磨作業や仕上げの作業、艶出し、色彩合わせは、現在でもアナログ的な部分も残っており、歯科技工士の職人的な技が必要となります。大部分においては現在のデジタル的な製作法を習得し、一部分については従来の職人的な技術を大切に、今日も歯科技工士は働いております。
本歯製作の前に試し歯を製作する歯科医院は横浜にほとんどない。
当院の人工歯製作の特徴として「本歯を製作する前に試し歯を入れる」ということがございます。これは仮歯の概念とは異なります。仮歯は本歯が入るまでにとりあえず入れる歯のことで、本歯の形態の製作とは全く関係がありません。しかし、試し歯とはCADCAM機でプラスチックを削って製作するもので、患者さんのお口の中にセットし、実際に形態や使い勝手を見ていただく歯になります。試し歯を入れて患者さんには鏡を見て見た目をチェックしていただくこともできますし、食事もしていただけますし、その際どこに食べ物が詰まるか、頬を噛まないかどうか、発音障害がないか、異物感がないかどうかなどさまざまな項目を感覚的にチェックすることができます。試し歯がなければ、いきなり本歯がセットされ、イメージと異なる見た目になってしまい後悔させてしまう場合もあると思います。そのため、難しい症例の場合は試し歯を入れて、患者様にチェックしていただいてから本歯を製作するのが間違いないかと考えております。しかし、この方法をやるには試し歯を製作する経費がかかります。(当院では治療費の中に入っていますのでご安心ください。)そのため、試し歯を製作する歯科医院は全国的に見ても少ないわけです。(または別料金になることが多いです。)
ジルコニアディスクカラーの種類を当院ほど揃えている歯科医院は横浜でも少ない。
ジルコニア加工において歯の色は、工場でジルコニアディスクを製作する際に着色して納品される仕組みです。メリットとしては工業的に安定した色が出せる、職人的なというのはマイナスな意味だと不安定なという表現にもなりますが、歯科医師が狙った色にはなりにくいというアナログ技工の欠点ということに長年悩まされてまいりましたが、そのようなことは無くなりました。A3という色を選択すれば、A3にしかならないというシステムになったわけです。これは歯科技工をデジタル化して非常に良かったと思われた部分です。
しかし、歯の色は人により千差万別です。人により白っぽい方、黄色っぽい方、赤みのかかった方、灰色っぽい方があり、その全てに対応しなくてはいけません。そのため当院では、30種類以上の色のジルコニアディスクを用意しております。色によってはよく使われるジルコニアディスクもあれば、購入してから数年全く使ってない色のジルコニアディスクもございます。しかし考えられる色は全て揃えておかないと、どんな歯色の方がいらっしゃるか分からないため使わないだろうと思われる色も取り揃えております。中には芸能人のような真っ白い歯をご希望される患者様もいらっしゃいます。そのような色は滅多に使う事はございませんが、ご希望された際にはいつでも使用可能な状態に体制を整えております。そのようなあまり使われない色のジルコニアディスクは歯科医院にとって経営を圧迫しますので通常は取り揃えている歯科医院は少ないと思います。