抜歯即時インプラント手術について
- 2022年9月20日
- インプラント
今回は歯を抜いて、抜いた穴にすぐにインプラントを埋める、抜歯即時インプラントというお話をしていこうと思います。本来インプラントというのは歯を抜いてから半年待っていただいてそれから手術をするというのが基本なんです。
歯を抜くとこのように骨に穴が開きます。その穴がおおよそ平らに埋まる、例えば反対側の上記画像のようにおおよそ平らに終わるまで約半年かかるんです。このように平らになってからインプラント手術、ドリルで穴を開けてインプラントおいてくると。そうすると骨の支持がしっかりとしてます。
インプラントが安定しますのでこの形が理想型なんですね。しかし、この理想通りやりますと歯を抜いて半年待ってインプラントを埋めて+3ヶ月、そして人工歯制作までに2週間かかりますのでなんだかんだで治療終了まで10カ月弱の期間かかってしまうということになるわけですね。
前歯の歯のように見える部分ですね、見える部分を早く入れたい、10か月はとても待てないという要望がありますので抜歯をしてあいた骨の穴にすぐにインプラントを埋めていく方法、抜歯即時インプラントという方法をご紹介します。この場合は約3か月半で治療あるので10ヶ月という期間と比較すると大幅に期間が短縮されるということになります。では、すべて抜歯即時インプラントでいけるかといえばそうではなく、できる場合とできない場合があります。今回は前半に抜歯即時インプラントの術式を紹介し、後半に抜歯即時インプラントができる場合とできない場合の話をしていきます。※この説明での画像では術者の手や器具の位置など、実際の治療と違う場面があります。カメラアングルを最優先とした事情をご理解ください。
抜歯即時インプラントの術式について
まずは抜歯から。抜歯をする理由は様々ですが今回は歯根膿瘍で根治を施したがダメで抜歯になった設定で話を進めます。
塗り麻酔を行い、5分ほど待ちます。
次に麻酔薬を歯肉に注入していきます。これは歯を抜くときの一般的な麻酔法です。特別な麻酔は使用いたしません。裏側にも注入していきます。そして5分ほど待ちます。
歯を抜いていきます。健康な歯ではないので比較的容易に抜けます。今回は歯根膿瘍なので歯の根の先に粘膜のような袋がくっついてきます。ここはざっくり言ってしまえば感染が成立した場所で袋のようなものは一部歯にくっついてきますが残りは骨の中に張り付いています。
その残りを耳かきのような器具を使って、掻き出していきます。歯根膿瘍の袋とともに歯根膜という靭帯も骨に張り付いていますのでまとめて掻き出していきます。痛そうですが麻酔をしていますので痛くはありません。通常の抜歯ではこの掻き出す工程はあまりを行いません。しかし、今回は抜歯した穴にインプラントを入れるわけですから、感染した組織はもちろん骨以外の組織はすべて邪魔になるわけです。新鮮な骨がしっかりと露出するまで掻き出していきます。
骨以外の組織はなくなり、穴の壁の部分は全て新鮮な骨だけです。当院の場合ですが抜歯即時ができるかどうかの最終判断はこの時点で行います。今回模型程度の穴でしたら抜歯即時は可能だと判断を致しますのでこのままにインプラント手術にうつります。
メスで切開をします。剥離子で歯肉を少し剥いで骨の形態を確認します。
今ここに開いてる穴は歯の歯根が入っていた場所ですから歯の植立方向(歯のかたむき)を表しているわけです。しかし前歯に限って言えばインプラントはこの歯の植立方向とはちょっとずらして入れていくことになります。元々の歯の植立方向よりインプラントは少し起きたような感じになります。多少ずれるんですね。理由はインプラントの人工歯を最終的にはこのようにネジで止めるんですがそのネジの穴は見えるところに出てしまうと格好悪くなってしまうんです。そのため少し内側に入れるというテクニックを使います。
ドリルで穴を掘っていきます。インプラントで使うドリルはモーターで静かに回ります。低速回転でもありますので、歯医者でよく聞くタービンというキーンという音は鳴らないです。ドリルは高速回転で回さないんです。高速回転で回しますと中で摩擦熱が発生して、その熱が50度とか60度とかある程度発生していきます。そうすると、中の骨の細胞が死んでしまうんです。その温度でもやけどということになりまして、インプラントはくっつかなくなってしまうんです。そのため冷却水でしっかりとドリルを冷やしながらゆっくりゆっくりと掘り進めていきます。また骨を掘り進めてますと骨の削りカスが粉末状になってこのようにくっついてきますのでそれを集めていきます。
これはご自身の骨ですので後で骨移植に利用します。初めは直径2ミリのドリルから始めて3mm 4mmと少しずつ計の太いドリルに交換していきます。歯の入っていた穴とインプラントをこれから埋めていく穴がちょっとずれてるんです。器具にくっついてきた骨はすべて集めていきます。あとで隙間に対して埋めていく材料になるんですが、これ以上良質な材料というのはないんです。
直径4ミリ深さは10ミリ程度の穴は開きましたのでインプラントを入れていきます。
入れる時にも熱が発生しないようにゆっくりと入れていきます。少しずつ少しずつ入れていくんです。そうするといい位置にキュッと止まりますのでここがベストポジションということになります。この時インプラントは骨によってしっかりと支持をされているのが望ましいです。中で遊んでしまっては3ヶ月の間でくっつかないんです。
キャップをしていきます。キャップもしっかりと止めていきます。
この時に骨とインプラントとの間、3ミリ程度隙間があいています。これはインプラントをずらして入れてるのでこのような隙間必ず開くんです。
この隙間に先ほどから集めていた骨の削りかすを入れていきます。こちらを自家骨移植と言いましてどんな人工骨よりも馴染みがいいと思います。当院ではあまり人工骨を使わない方針でいます。このように自家骨を積極的に使用しております。インプラント手術の後3カ月間そっとしておくんですね。その3カ月の間に新しい骨ができてきてその隙間を満たしてインプラントをきれいに包み込んでいくということになります。この移植した自家骨がそのまま新しい骨になるわけではないんです。歯茎が入らないようにブロックをしているだけの役割になるんです。歯茎が入り込んで来なければ今の隙間は骨になっていくということなんです。
縫合をしていきます。
これで手術が終わりになります。抜歯をしてから10分から15分程度の手術時間になります。前歯ですからさすがにこの状態では帰れませんので、仮歯を入れていきましょう。
このようにも出来合いの人工歯があるんです。適当な大きさのものを選んでいきます。
大体合うものを選んだら調整していきます。適度な大きさに加工ができたら下の歯にかみ合わないように注意しながら両方の端に対して接着剤でつけていきます。手術直後の出血が多いようでしたら、この工程は次の日に行います。
接着剤で止めていきます。10分ほど時間置くと硬化します。これで完成です。隣の歯に接着剤で止めるだけですからあまり硬いものを噛まないでくださいね。
ということで抜歯即時インプラントの術式の説明を終えます。
この後は2、3週間後に糸を取り3カ月後にくっついてるかどうか定着確認をして人工歯を立てていくという流れになります。
今回は抜歯即時インプラントについて説明しましたが、次回は抜歯即時ができるかできないかの判断についてご紹介したいと思います。横浜近郊でインプラントを検討されている方、抜歯後の治療でお悩みの方、ぜひ横浜歯友会 戸塚駅前内藤歯科へご相談ください。セカンドオピニオンも承っております。抜歯即時インプラントの説明の動画についても当院YouTubeチャンネルで公開しておりますので、こちらからご覧ください。インプラントに対する考え方などHPに記載しております。