インプラントと歯ぎしりについて
- 2025年8月21日
- インプラント
インプラントと歯ぎしり(ブラキシズム)の関係については、歯科医療において重要なテーマの一つです。歯科医師の間でも、歯ぎしりのひどい人にはインプラントを入れるべきでないと言う意見もあれば、入れても問題はないと言う意見もあり、ここは完全な一致をしていないと言うのが現状です。歯ぎしりは、多くの人に見られる無意識の習慣であり、特に睡眠中に発生することが多いです。睡眠中の歯ぎしりは力が強くて、起きている時の2倍以上の力がかかることがあり、このような歯ぎしりがインプラントにどのように影響するのか、またそれをどう防ぐかについて、以下の観点から詳しく説明します。
歯ぎしりの概要と原因
歯ぎしりとは、無意識に歯を噛みしめたり、すり合わせたりする習慣であり、ブラキシズムとも呼ばれます。歯ぎしりは日中に起こることもありますが、主に睡眠中に発生することが多く、原因はストレス、緊張、睡眠障害、咬合異常(噛み合わせの問題)など、さまざまです。歯ぎしりは人間以外にも、類人猿(猿、ゴリラ)や群れで行動する哺乳動物(犬、猫、豚、馬、兎など)に見られます。群れで行動する時にさまざまなストレスがありますが、歯ぎしりによってストレス解消をしているのではと言う説が有力視されています。人間も人間関係なしで生きていくことはできませんし、その恩恵は計り知れませんが、合わない人との間に発生するストレスという副作用もデメリットとしてあるわけでして、これを平和裏に解消するのが歯ぎしりだという説です。
歯ぎしりは歯に過剰な負荷をかけるため、歯の摩耗、顎関節症、頭痛、肩こりなどの症状を引き起こすことがあります。
インプラントへの影響
インプラントは天然の歯とは異なり、歯根部分がチタン製の人工歯根であるため、噛み合わせや負荷の分散方法もかなり異なります。天然歯は歯根膜を介してまるで柳の木が風を受けながずように歯ぎしりの力を受け流します。しかしインプラントは直接骨と結合する力だけにより、歯ぎしりの力に耐えます。ですから歯ぎしりによって発生する過度な咬合力がインプラントの抵抗力を超えてしまうと以下のような問題が発生する可能性があります。
インプラント体への過剰な負荷
歯ぎしりによってインプラント体に加わる力は、通常の噛む力に比べて2倍以上とはるかに大きいことがあります。通常の噛み合わせでは、噛む力が均等に分散されますが、歯ぎしりのような無意識な強い力は、特定の歯やインプラントに集中してかかることがあり、インプラントの周囲の骨に過剰な負荷を与える可能性があります。これにより、インプラント周囲の骨吸収が進み、骨とインプラントの結合が損なわれ、インプラントが不安定になる、あるいは脱落するリスクが高まります。
上部構造(クラウン)の破損
インプラントの上部には、人工歯が装着されますが、歯ぎしりによって過度な力が加わると、このクラウンが破損する可能性があります。特にセラミック製のクラウンは審美的には優れていますが、硬い反面、衝撃に対して脆弱であるため、歯ぎしりの強い力で欠けたり割れたりするリスクが高まります。一般的に、咬合力が強くかかる部位には、耐久性の高い材料を選択することがあります。治療方針は症例や咬合状態に応じて歯科医師が判断します。当院ではこれに対応するために、奥歯に対しては無垢のジルコニアと言う種類の強い材料を使っています。さらに咬合負担が大きい症例では、力を分散させるために、複数の構造に分ける設計が行われることがあります。
インプラントの歯ぎしりの対策
インプラント治療において、歯ぎしりの問題にどう対処するかは非常に重要です。歯科医師は、患者が歯ぎしりをしているかどうかを事前に確認し、適切な対策を講じることで、インプラント治療後の安定性が期待されます。ただし、治療効果には個人差があります。
以下に、歯ぎしりに対する具体的な対策を説明します。
術前の審査
歯ぎしりをしているかどうか?を診断するために、歯の磨耗具合、歯並び、骨隆起の大きさ、朝起きた時に顎が疲れているかの問診などをして歯ぎしりのリスクを考えます。
ナイトガードの使用
ナイトガードは、歯ぎしりから歯やインプラントを保護するために使用されるマウスピースです。ナイトガードは柔らかい素材で作られており、寝ている間に装着することで、歯ぎしりによって発生する力を吸収し、インプラントや天然歯にかかる負荷を軽減します。ナイトガードは患者ごとにカスタムメイドされ、個々の口腔の形状に合わせてフィットするように作られるため、効果的な対策となります。一般的に、ナイトガードは個々の口腔内の状態に合わせて厚みや素材を調整して作製されます。
噛み合わせの調整
インプラント治療において、噛み合わせの調整は非常に重要です。歯ぎしりをする患者の場合、噛み合わせが不均等であることが多く、特定の歯やインプラントに負荷が集中しやすくなります。これにより、インプラントにかかる負荷を減少させ、長期的な安定性を確保します。咬合調整では、咬合紙などを用いて噛み合わせを確認し、垂直に噛んだり、歯ぎしりをしてもらって、ひっかかりがないか判断して、ひっかかりがあればタービンで削って調整します。
セラミッククラウンの素材選び
歯ぎしりがある患者に対しては、クラウンの素材選びも重要です。
咬合力の強い部位には、耐久性のある素材が選ばれることが多く、強度のあるジルコニアも選択肢の一つです。素材の選定は歯科医師が総合的に判断しますが、当院では奥歯に関してはジルコニアの中でも1200MPa以上という強度の高いジルコニアだけを使用します。前歯は審美的な部分であるため、1200MPa以上のジルコニアの上にポーセレンという色の調整がきく素材を焼き付けて作ることもあります。
インプラントの選択肢と設計の工夫
歯ぎしりがある患者に対しては、インプラントの設計や選択も重要なポイントです。歯ぎしりが強い患者には、太めのインプラントを選んだり、長めのインプラントを選んだりします。またインプラントを複数本使用して負荷を分散させることが考えられます。また、インプラント周囲の骨の状態に応じて、骨移植や骨造成術を行い、インプラントの安定性を高める工夫も行うことがあります。
歯ぎしりに対する根本的な治療
歯ぎしりの対策として、ナイトガードや噛み合わせの調整が一般的ですが、根本的な原因にアプローチすることも大切です。歯ぎしりの原因には、ストレスや緊張、睡眠障害が関与していることが多いため、これらの問題に対処することで歯ぎしりの頻度や強度を軽減することができます。またボトックス注射をして歯ぎしりを弱めることもあります。
まとめ
歯ぎしりは、インプラント治療において考慮すべき要因の一つです。ナイトガードの装着や噛み合わせの調整、素材の工夫などによって、インプラントを守るための方法があります。また、ストレス管理や生活習慣の改善が役立つこともあります。治療をご検討の方は、担当医と十分にご相談のうえ、セカンドオピニオンも取り入れてご自身に合った方法を選択されることをおすすめします。
横浜でインプラントを検討中の方へ、当院で行っているインプラントの症例をHPに掲載しておりますのでご覧ください。横浜近郊でインプラントをご検討の方は、医療法人社団横浜歯友会 戸塚駅前内藤歯科へご相談ください。セカンドオピニオンも承っておりますので、お気軽にお問合せください。ご予約はWEBでも承っております。