インプラントは歯周病菌を少なくしてから
インプラントは歯周病菌を少なくしてから
こちらの動画をご覧いただければ、概要についてご理解いただけると思います。
手術で埋めたインプラントは3ヶ月経つと骨と結合します。骨とインプラントはとても強力に結合しますので、通常であれば、何十年経っても抜けたりすることはないはずなんです。しかし現実には10年以内に、埋めたインプラントは100本中、1〜2本ほど抜けてきてしまいます。なんで抜けてきてしまうのか?理由は2つあります。
一つは歯ぎしり、つまりは自分自身の咬合力によって、インプラントを支える骨が溶けてしまって、抜けて来てしまうわけです。当然、一番力のかかる奥歯に入れた1本インプラントで起こることが多いです。これについては、通常よりも長くて太いインプラントを入れることにより、骨との結合面積を増やすことによりほぼ解決できます。
それより2番目、インプラント最大の敵はインプラント周囲炎です。 インプラントの周りが、自分自身のお口の中にいる細菌によって感染を起こして、インプラントを支える骨が溶けてしまってインプラントが抜けてきてしまうトラブルです。 ストローマンインプラントの手術後10年で100本中3本くらいの割合でインプラント周囲炎が起こるという報告があります。(スイスのベルン大学調べ) インプラント周囲炎になったからといって、すぐにインプラントが抜けてくるということではなく、5年とか10年とかかけて、長い時間をかけてゆっくりと骨が溶けて、抜けてきてしまうわけです。 発症したインプラント周囲炎を確実に止める方法は今のところ確立されてないんです。
インプラント周囲炎は歯周病によく似ています。 歯周病菌と分類される中にPg菌、Tf菌、Td菌という、たちの悪い3種類の細菌が存在していて、 これらをまとめてレッドコンプレックスなんて言い方をしています。 この3種類を持っている方、特にPg菌、これは歯周病菌の王様なんて別名もあるくらい悪い菌です。さらにPg菌の中でもPg菌の2型がお口の中にいる方の歯周病は急激に進むことで知られています。
30代や40代前半の若い方で、あちこちの歯がグラグラして噛めないといった急激なタイプの歯周病の方にはPg菌などのレッドコンプレックがいることがほとんどです。 逆に同じ歯周病でも60代後半とかで部分的に歯が揺れてくるような、ゆっくりと進行するタイプ歯周病とは意味合いが違ってきます。 こちらのタイプはレッドコンプレックスによる歯周病でない可能性が高いです。
急激に進むタイプの歯周病の方にインプラントを入れてしまうと、インプラント周囲炎のリスクは当然高いというわけです。
最近ではインプラント手術をする前に、レッドコンプレックスがいるかいないかを検査すべきという考え方が、インプラント業界の中で広まってきています。横浜歯友会でも、インプラントの術前検査に、レッドコンプレックス3種類のPCR検査を受けていただく方針といたしました。患者さんのお口からプラークを採取して院内のPCR検査機(オルコア)で検査し診断いたします。 レッドコンプレックスが問題ない量であれば、インプラント手術を行います。しかしレッドコンプレックスが多い場合は投薬(歯周内科)を行いレッドコンプレックスを減らす治療を行います。 歯が抜けました、それではそこにインプラントを入れましょうという、従来の安直な考え方では、インプラント周囲炎になる確率を下げられず、 安心してインプラント手術を受けることできません。インプラント周囲炎の発症確率をできるだけ下げるために横浜歯友会では令和5年9月よりインプラント手術を受ける方へのPCR検査を行う方針といたしました。PCR検査機(オルコア)を3台揃えている横浜でも数少ない医院です。
費用:16,500円(自由診療)
歯周内科治療は位相差顕微鏡検査・リアルタイムPCR検査で、お口の中に感染している細菌・真菌・原虫などを特定し、動画管理システムに記録しそれらの微生物に感受性のある薬剤を選択し、微生物叢を非常に綺麗な状態に改善することで歯周病を内科的に治す治療方法です。 治療前の非常に汚れた微生物叢が治療後は非常に短期間で綺麗に改善し、術前・術後の状態が一目瞭然に画像で示されるという利点があることが知られています。 また、はっきりと自覚できる程、歯茎からの出血や排膿が短期間で改善されます。以前は、長時間歯磨きや外科治療によって1~2年の治療期間でそのような綺麗な微生物叢を獲得していたのです。 微生物叢が改善されたら、歯石を除去します。その場合も、微生物叢が改善されていると、冷たいものがしみるというような症状が非常に少なく なることが知られています。 (なお、前歯においては短期間で歯茎が縮むので歯が伸びたような感覚が生じることがあります。そのような場合には残念ながら通常の治療では 元々骨が溶けている状態ですので改善は難しいようです。その場合は特殊な審美外科を行う必要があるかもしれません。
国際歯周内科研究会HPより引用
PCR検査によりレッドコンプレックスが多いという診断を受けた方は、インプラントを諦めていただくか、歯周内科治療を受けていただきます。歯周内科に進む可能性は当院調べですが3割ほどの方がPCR検査でひっかかっております。 歯周内科の流れは 抗生物質を服用する、真菌薬で歯を磨く、マウスピースの中に薬剤を入れて歯に装着して消毒をしていただくなどのメニューを1ヶ月程度、ご自宅にて行なっていただきます。 歯周内科治療が終わったら再度PCR検査(¥16,500)を行い、効果を確認いたします。 横浜歯友会では、上記の流れはインプラント周囲炎の発症確率を下げるために、必要な検査、治療法だと考えております。
費用:66,000円(自由診療)
(1)位相差顕微鏡検査、リアルタイムPCR法による歯周病菌の検査診断の後の投薬 (2)位相差顕微鏡検査による除菌確認 (3)歯周ポケット検査 歯石とり(患者様によって回数は異なります) (4)位相差顕微鏡検査・リアルタイムPCR検査・歯周ポケット検査(再評価)
歯周病が治ったら再感染に気をつけましょう。回し飲み、回し食い、箸の使いまわし、キス、くしゃみなどで感染します。また、ご自宅でのケアも大切です。お口の中が清潔であれば歯周病菌が感染する可能性は低くなります。毎日の歯磨きが大切です。横浜歯友会 戸塚駅前内藤歯科では歯科衛生士による丁寧なブラッシング指導を行っております。毎日の歯磨きで歯周病菌が増えることを防ぐことができます。自分で磨けない部分が必ずありますので、定期的に歯科医院での歯のクリーニングを受けていただきたいです。また、1年に1度は再感染の状態がないかリアルタイムPCR検査を受けることをお勧めいたします。